Gセレクション 石川朋佳「Brackets」
■ 会期:2008年6月24日(火)〜6月29(日)
■ 時間:11:00〜20:00(最終日は17:00まで)
■ 会場:ギャラリーG
   (広島市中区上八丁掘4-1公開空地内)
■ 入場:無料
括弧のなかの「括弧」

 展覧会の題名であり作品名でもある Bracketsは、括弧を意味している。括弧とは、内と外を
分かつ記号であり、すぐれて関係的な概念である。現象学に関心のある者ならば、現象学的還元、
すなわち自然的態度が無反省に確信している事物や世界の実在性を括弧に入れるという操作を思い
起こすだろう。
 だが、石川朋佳の作品には、そうした現象学的な問題設定とどこかそぐわないところがある。
 まず、石川が用いる括弧は鉤括弧であり、日本語にのみ存在する記号である。括弧という、現象
学に通じる普遍的、根源的な問題を扱いながらも、鉤括弧という、地域性の刻印を押された記号を
石川
は用いている。
 次に、石川はその「括弧」を文字通りに作品化している。すなわち、括弧という関係的な概念を
実体化している。この作品を見て、ロバート・モリスの《無題(3つのL字型材)》(1965_67年)
を想起する者も多いだろう。モリスは、同じ形をしたL字型材が置き方の違いで生み出す知覚の違い
に関心を持った。しかし、多数の括弧で構成される石川の作品において、作品間の知覚的な差異は
複雑化し後退していき、モノとしての括弧が立ち現れてくる。
 第三に、現象学に関心を持っていたモリスのものよりも、石川の作品ははるかに小さい。これは
単なる大きさの問題ではない。ミニマル・アートの代表作であるモリスの作品は、作品が鑑賞者と
関係を取り結びやすいように大きさを設定していた。だが、石川の作品は、小柄な作家の身の丈に
あった大きさである。そこでは、鑑賞者と作品よりも、作家と作品の関係のほうが重視されている。
その意味で、石川の作品は、そのミニマル・アート的な外観にもかかわらず、作家の個性を刻み込む
実存主義に限りなく近づいている。
 石川のBracketsは、価値的に異なる二者の間で鑑賞者を分裂させる。こうした価値の宙吊りが、
石川の作品を大きく特徴づけているのではないだろうか。多数の「括弧」は、鑑賞者に、いわば現象
学的なエポケーをもたらす。石川のBracketsは、その意味で、まさに「括弧」に入れられた作品と
なっているのである。

加治屋健司(美術史家・広島市立大学芸術学部准教授)
■石川 朋佳■ ISHIKAWA Tomoka
<略歴>
1980  広島生まれ
2003-04 ドイツ、ハノーバー専科大学留学
2005 広島市立大学大学院芸術学研究科博士後期課程満期退学
<展覧会>
2004 「Tomoka Ishikawa 展」アトリエ・ブロック16(ハノーバ、ドイツ)
    「ろくでなし」(ハノーバ、ドイツ)
2005 「第21回現代日本彫刻展」
-06  広島市立大学・ニュルンベルク美術大学アートプロジェクト「ーKHORAー」(広島)
2006  
広島市立大学・ニュルンベルク美術大学アートプロジェクト「ーKHORAー2」
      (ニュルンベルク・ドイツ)
     「日韓交流展」(広島/ソウル)
2007  「Points of view」(フライブルク・ドイツ)
<受賞歴>
2004 「第21回現代日本彫刻展」(模型入選)

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